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ルールベースの寸法計測 — ピクセルをミリメートルに変える方法

公差が数値で決まっている検査には、AIよりも計測が適しています。キャリブレーション、輪郭抽出、円フィッティングで直径・厚さ・真円度を測り、AI判定と併用する構成を説明します。

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この講座のポイント
  1. 厚さ1.8 mm以上のように基準が数値で決まっている場合は、ルールベースの計測が説明可能で正確です。
  2. ピクセルをmmに変換するキャリブレーション値(mm/pixel)が、計測精度の出発点です。
  3. 輪郭を安定して抽出し(ブラー・モルフォロジー・Canny)、耳のような突起部を除いて円を当てはめることで、1ピクセル未満の精度が得られます。
  4. 現場では、AI(外観)+ YOLO(既知の欠陥)+ 寸法(公差)を併用し、互いの抜けを補い合います。

「外観に異常があるか」はAIが得意とする問いです。しかし「内径が51.2 mm以上か」は、AIよりもものさしで測る方が適しています。結果を数値で残せ、なぜ不良なのかを説明でき、学習データも必要ありません。この講義では、円形部品を例に、画像から寸法を測る過程をたどります。

厚さ t内径 D耳(ear) — 円フィッティングから除外 計測項目 Inner Diameter · 内径Circumference · 周長Thickness · 厚さ(複数角度の平均)Roundness · 真円度Ear Angle L·R · 耳の角度 結果例: Dia 51.39 mm · Thickness 1.88 mm · Roundness 93.76 %
fineAi Dimensional Measurement Tool が円形バンド製品で測る項目。結果例は実際の計測画面の値です。

1. キャリブレーション — 1ピクセルは何mmか

画像上の距離はピクセル単位です。これをmmに変換するには、mm/pixel の値が必要です。寸法が既知の基準物(ゲージブロック、キャリブレーションプレート)を同じ位置で撮影し、実際の長さをピクセル数で割ります。たとえば EB ラインの設定は 0.041 mm/pixel です。1ピクセルの誤差が 0.041 mm の誤差になるということです。

キャリブレーションは、カメラの高さ、レンズの焦点、解像度が変わったらやり直す必要があります。5MP(2448×2108)のカメラに変更すると、同じ視野でmm/pixelが小さくなって精度は上がりますが、値を新たに求め直さなければなりません。

2. 輪郭抽出 — 境界を安定して見つける

計測とは結局、境界線上の点を扱う作業です。境界が揺らげば、計測値も揺らぎます。

  1. Gaussian ブラー — ノイズを減らし、偽の境界を除去します。
  2. 二値化 — 部品と背景を分けます。照明が均一でない場合は、領域ごとに基準を変える適応的閾値を使います。
  3. モルフォロジー演算(Morphology) — 小さな穴を埋め、細かいヒゲを除去します。
  4. Canny エッジ — 明るさが急激に変化する線を境界として抽出します。

3. 円フィッティング — 1ピクセル未満の精度

境界の点に最小二乗法で円を当てはめると、数百の点が平均化されるため、1ピクセルより小さい単位で中心と半径を求められます。ここで重要なのは、円でない部分を除くことです。バンドの耳(ear)のように突き出た部分が含まれると、円がそちらに引っ張られます。Multi-Inspector EB は耳の領域を除外して円を当てはめ、1ピクセル未満の精度を目指します。Hough 円検出は高速ですが精度が低いため、画面表示用にのみ使います。

4. 項目ごとの計測

  • 厚さ — 指定した角度区間に複数の計測線を引き、内側と外側の境界間の距離を測ります。上位N個を選んで外れ値を除くことで、ほこり1点で厚さが変わらないようにしています。
  • 真円度(Roundness) — 輪郭が真円にどれだけ近いかを比率で表します。歪んだ部品は値が下がります。
  • 周長・内径 — 当てはめた円と実際の輪郭から計算します。

5. ルールで判定する

Multi-Inspector では、計測モード(circularity)にルールを設定します。たとえば roundness, thickness, circumference をルールに指定し、各項目の許容範囲(真円度 0.931 以上など)を定めます。範囲を外れると、NG-Dim-THICKNESS のように、どの寸法が原因で不良なのかが結果に残ります。

AIとの併用 — 3重判定

Multi-Inspector EB v2.3 は、1つの部品を3つの方式で同時に判定します。

モード 方式 検出するもの
mode1 · AIモデル 位置合わせ(rotation-fix2)後に異常検知 初見の外観異常
mode2 · YOLO 位置合わせ(yolo_align)後に物体検出 名前の決まっている欠陥
mode3 · 寸法 円フィッティング計測(circularity) 公差を外れた寸法

AIは数値公差を守っているかを知らず、計測は表面のキズを知りません。3つの判定を併用すれば、互いの抜けが補われます。位置合わせ済みの画像は一度だけ生成して計測モードと共有するため、判定が増えても処理時間は大きく増えません。